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第十八話 姉さんと祐くん♪ |
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これは『ONE〜輝く季節へ〜』と『Kanon』のクロスオーバーSSです。 ネタバレを含みます。両方やってないとわらないかも。 |
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基本的には目立たない方が良い。 よく誤解されるのだが、おれの基本方針はそれだった。 浩平と一緒にいると嫌でも目立つから普段はそうならない様に心掛けているつもりだ。 そう言ったら笑われたが。 曰く、「無理」(by 北川 潤) 曰く、「自覚しろ」(by 住井 護) 曰く、「こういう言葉は嫌いだが、運命だ」(by 橘 真耶) 曰く、「血みどろくまさん」(by 折原浩平) ……最後のやつは何だか関係ない気がする。 それはともかく、おれは目立つような行動は慎んでいる…つもりだ。 それでも結果的に目立ってしまうのは、トラブルの方が向こうからやってくるからだ。 しかも最近は在庫の一斉放出セールでもやっているのか、悩みの種は尽きない。 その大半は身内だったりするのだからたちが悪い。 この街に来てからと言うもの、安息が遠ざかった気がする。 でも、こんな騒がしさも良いかもしれない。 少なくとも6年間記憶を封じ込めて立ち止まっていた頃よりは 遥かにマシなはずだ。 祭りのような一種の熱病に浮かされたような毎日。 そんな喧騒に溢れた充実感も悪くないと思える。 …というか、そう思わせてくれ。 ○ ● ○ ● ○ ● 日曜日の商店街。 休日だけあってさして見る物があるわけでもないここにも 人が集まっている。 もう見なれてしまった光景。 買い物に来た主婦達。 学校から開放された学生達。 そんな中、視線を一身に集めている、おれ。 「祐くんもそんなまな板よりもお姉さんの方がいいんだよね!」 「まなっ、まな板!?」 その言葉に栞が激昂する栞。 それは禁句というやつだぞ、姉さん。 「そう言う悠紀さんだって、旬の過ぎた若年増じゃないですか!」 「わうぅ、まだ私は十八なんだね!」 「時代は年少嗜好なんです。 負けい犬は黙っていて下さい!」 それは要するにおれがロリコンだと言いたいのか? それは違う……と思うぞ。 あゆあゆやまこぴーに手を出したことはないし、 栞にだって何もしてないだろ? いや、まあ、秋子さんや香里の反応が怖いからと言えばそれもあるんだが。 「あら栞、『若年増』はわたしにも当てはまるのかしら?」 「えぅ、お、お姉ちゃん」 ここで香里まで参戦か。 女三人寄れば姦しいとは言うが、この場合は―― 「地獄絵図だな」 おれの内心の言葉に続けるように浩平が呟く。 今のは声に出してないはずだぞ。 「地獄、苦痛に苛まれた時間をそう呼ぶならまさにその通りだな」 おれは内心の暗澹たる思いを絞り出すように告げる。 「同時に天国でもあり、だな」 珍しく揶揄するような口調の真耶。 何か今日は機嫌悪そうだな。 「……代わってみるか?」 「やめておく、被虐趣味は無い」 首だけ限界まで後に回しながら話すのはかなりきついが、 それ以上に目の前、言葉どおり本当に眼前で繰り広げられている 既に子供の口喧嘩レベルまで落ちた女の闘いを正視するよりはましだ。 「はぁ、こればっかりは慣れないな」 思わず溜息が漏れる。 騒がしくも幸せな日常、今のおれが置かれている状況を端的に表現するなら この一言に尽きるだろう。 そもそも何でこんな事になったのか、少し回想モードで逃避してみよう。 ○ ● ○ ● ○ ● 〜回想〜 家を出たあとおれ達は公園へ行った。 姉さんとみさおちゃんにこの街の地理を教えると言う意味でも 色々な所に寄るのがいいと思ったからだ。 「祐くんとデート♪ 祐くんとデートなんだね〜♪」 先程から上機嫌で、それこそ本当に空も飛べそうなくらいの雰囲気で姉さんが謎の歌を歌っている。 歌っている、と言うより詠っていると言う方が意味的には近いかもしれない。 歌詞も曲も即席の代物だが、なぜか上手い。 この辺のある種の器用さは母さん譲りかもしれない。 問題は歌詞の内容だ。 浩平は他人のふりをしてるし、みさおちゃんも苦笑を浮かべている。 浩平はわざと離れて歩いているし、みさおちゃんは浩平の側を離れるわけが無い (手まで繋いでいる)ので当然おれ達の近くには人がいない。 もっと単純に言えば壁も無ければ一緒に恥をかいてくれる同類もいないので 近所の奥様方のゴシップ大好きと言わんばかりの視線と、 姉さんの、これだけはおれも認める見てくれの良さに騙されている(としか思えない)野郎どもの やっかみの視線もおれが独りで受け止めなければならなかった。 まあ、姉さんはそんな事を気にもしていないだろうけどな。 こちらに越してくる前の学校ではおれと姉さんは有名だった。 良い意味も悪い意味も含めて。 何しろ入学して3日目に姉さんがおれのクラス乱入。 『愛妻弁当なんだね』と言ってそのまま一緒に昼食。 しかも、『はい、あ〜ん』のオプション付き。 ここまで付いてお値段(代償とも言う)はシスコン野郎のレッテルと 非公認ファンクラブとか名乗る先輩方の呼び出しと、まことにお得――なわけない。 おかげでいきなり高校生活が暗雲に包まれてしまった。 高校デビューを果たすぜ! と息巻いていたのにだ。 それでも姉さんは姉さんだし、おれにとっては大切な家族であることには変わりない。 邪険に扱うわけにもいかず、かと言ってそのままでは比喩ではなく生命の危機だった。 おれが本当は気が進まないこの街への転校と引越しを承諾したのも これが理由の1つと言えなくもない。 もっとも、あゆや名雪の事も含めて、この町の事はけりをつけなきゃならないと言う思いが たとえ記憶をなくしていても、いや、無くした原因があるからこそ、この街に戻ってくる決心が ついたのかもしれないな。 「う〜、祐くん、何考えてるの?」 おれの思索を姉さんの不機嫌そうな声が打ち破る。 歳は姉さんの方が2歳上だが身長はおれの方が高い為、 姉さんが上目遣いにおれを見上げる形だ。 「あ〜、いや、古き良き時代に思いを馳せていたんだ」 まさか、姉さんが原因であの学校に居辛くなったんだなって思ってた、とは言えない。 姉さんは大抵の事なら軽く流すが、おれに迷惑をかけた、と言うと物凄く気にする。 普段自覚してない分、おれからそれを指摘されるとひどく落込むのだ。 中学の頃、年頃ってやつでやたらと引っ付いてくる姉さんが煩わしくって 思わずきつい事を言ってしまった事があったが、その時は一週間くらい落込んでいた。 おかげで姉さんを溺愛しているうちの親父に散々説教をくらって 平謝りに謝り倒したというエピソードがある。 「わうぅ〜、ひょっとして祐くん、怒ってる?」 心配そうに姉さんが言う。 「いや、別にそう言うわけじゃ……」 言いかけておれは口を閉じた。 本当にそうだろうか? せっかく落ち着いたこの状況で、また騒動を起しかねないこの人を 正直、おれは心の何処かで疎んじている所があるんじゃないのか? 「……ごめんね、祐くん」 「あっ、いや別に怒ってなんか……」 「もう、祐くんも子供じゃないもんね」 そう言って姉さんは寂しげに微笑む。 普段の様子からは想像もできないが。 「お姉ちゃんは、もう要らないよね。 もう私が居なくっても、祐くんは大丈夫なんだよね」 おかしい。 姉さんは何を言いたいんだ? こんなの―― 「ほんとはね、私もあのまま外国に居てもよかったんだね」 ――全然、らしくない。 「でも、祐くんの事が心配だったから。 また、あの時みたいに傷ついちゃうんじゃないかって思ったんだね」 ――! 思い出す。 あの時。 何も出来なくって、悔しくて、悲しくて、心と記憶をを閉ざしたあの時。 「祐くんが、またああなっちゃうかもって思ったら、心配で来ちゃった」 そんな事ないのにね、そう言って姉さんはおれに背を向けた。 思い出す。 閉ざした心。 封じ込めた記憶。 忘れた町と、忘れられなかった想い出。 ただ、一番近くに居てくれたのは姉さんだった。 普段は意識してなかったけど、やっぱりこの人はおれの姉さんなんだと、 その時思った。 「……姉さん」 辛うじてそれだけを喉の奥から絞り出す。 ひどい罪悪感が胸の中に渦巻いていた。 そうだ、この人は、こんなにもおれのことを考えてくれていたのに。 「姉さん、おれが悪かった」 正直な気持ちだった。 「祐くんは、私のこと、好き?」 一瞬、言葉に詰まる。 が、それも刹那の事。 「ああ、好きだ」 淀みなく答えた。 「……愛してる?」 「もちろんだ」 家族として、だが。 「結婚しようね」 「ああ、もちろん結っこ――?」 ちょっと待て。 何だ結婚って? 「なんで結婚なんだ姉さん?」 「私は一向に構わないっ、だね!」 いや、そんな烈海王バリに断言されても。 「姉さん、民法に近親婚の禁止があるのを知ってるか?」 「私は一向に構わないっ、だね!」 「……………………はぁ」 いきなりシリアスモードに入ったと思ったら。 「愛し合う2人が結ばれるのは当然なんだね! 法律の方が間違ってるんだね!」 なんて理屈だ。 「幸い同志はたくさん居るんだね」 ねー、とみさおちゃんに話を振る。 「はい、頑張ります!」 「「おい!」」 思わずおれと浩平の声が重なる。 ああ、君だけはまともな思考の持ち主だと思ってたのに。 まあ、嗜好の方は別として。 「みさおちゃん、返事は『ダー、同志!』だね」 「は――じゃなくて『ダー、同志』」 空か、海か、何か青いものが見たくなった。 浩平も「エイエソはあるよ、ここにあるよ」などと呟いている。 この閑静な住宅街の中にあり、住民の憩いの場二人でもあるこの公園で そのまま党大会を開きそうな勢いだ。 「……頭痛い」 「それならバファ○ンがあります」 唐突に現れた栞のさし出してきた瓶の中から2錠を取り出す。 近くに水飲み場がないのが悔まれる。 「ああ、サンキュ」 礼を言って栞に子瓶を返す。 さて、これは実の姉が原因で起こった精神的頭痛にも効果はあるんだろうか? それにしてもバ○ァリンの半分が優しさならあの価格の半分は優しさの値段か。 人の優しさにまで値札がつくなんて。 「寒い時代だと思わんか?」 「えぅ〜、ワッケイン司令なんて嫌いです」 「そうね、微妙に使えないわよね。 いっそのことゴップやグリーンワイアットくらい無能ならギャグにもなったのに」 さすが学年一の秀才は容赦がなかった。 というか中佐で基地司令は無理があると思うぞ。 そんなに人手不足なのか連邦。 「ゴップの元がヘルマン・ゲーリングって説はホントなのか」 デブで無能だし。 「さあ? ところで、それ誰の説?」 「おれ」 「やけに独創的なのはそのせいね」 失敬な。 おれはいつだって常識と公衆道徳、エッセンスとして公序良俗まで考慮した 発言を常に心がけていると言うのに。 「で、美坂(姉)はなぜここに?」 「その(姉)はやめてちょうだい。 香里、でいいわよ折原君」 「そうか、じゃあ香里はなんでここに?」 律儀にも言い直す浩平。 そう言えばこいつも香里の事は教室では名字で呼んでたな。 そういった意味ではおれはいささか特殊な立場かもしれない。 「ええ、栞――ああ、私の妹の事だけど、栞の写生に付き合ってたのよ」 「何ですと!?」 おれは思わずそんな声をあげていた。 いや、だって栞の絵だろ? あの抽象画を写て更にこねくり回したような絵を描く栞だろ? 「まあ、出来は……ね?」 わかるでしょ?、と その表情と口調が全てを物語っていた。 「えうー、酷いです! ちゃんと上達してます!」 そう言いながらスケッチブックに書いた絵――と呼べるかどうか別にして、 まあ、とにかくスケッチブックに栞が描いたモノを見せられた。 ……何と言うか、どの辺が上達したのかはわからないが、進化している事は確かだった。 きっとこれを3日間連続で呪いたい相手に送ったら4日目には効果が出始め、 一週間後には入院しているに違いない。 一瞥しただけでも夢に見そうだ。 「わかめと昆布が葬列組んでフォークダンスとタンゴを踊ってる絵か?」 葬列組んで踊る理由はわからないが、まあ、浩平の評価は概ね一面の真実だった。 残念ながらおれはこれを正確に描写できる言葉は持ち合わせていない。 否、恐らくこの地球上のあらゆる言語体系を駆使してもこの――そう、ある種の恐怖を表現する事は出来ないだろう。 神や悪魔を正確に語れないのと同様に。 これは絵という芸術の枠を醜悪に歪めて、圧縮、無造作に叩き付けたようなインパクトがあった。 「なあ、一応、ホントに、いや実は否定してもらいたくて訊くんだが」 そこでおれはいったん言葉を切った。 その数秒で覚悟を完了しておかねばならなかった。 そう例えば零式甲冑を纏って牙無き人の明日の為に捨て身で戦えるくらいの。 「この、『お姉ちゃん』ってのは香里の事で、あまつさえこの物体Xの仮称名称だったりするのか?」 「はい、これは『お姉ちゃん』のスケッチです」 栞は全く無邪気に、生来持ち合わせたその可憐さまで動員して答えた。 宗教か唯物主義か、何か絶対的なものに縋りたくなった。 しかしそれは楽になると同時におれを形作る人格を思考停止に追い込みかねない。 『我思う、故に我あり』とは良く言ったものだ。 逃避的な思考から何とか数分でカムバックを果たせたのは我ながら大した物だろう。 「な、何と言うか前衛的だな」 浩平も何とか絞り出すようにそれだけ言う。 意識を保っていられるだけでも大したものだ。 しかし、これを前衛的、の一言で済ませられるなら 3歳児のおねしょあとだって芸術になりかねん。 「そう言うのは素直に下手というべきだ」 正直すぎて辛辣なのはこいつの悪い所かもな。 「奇遇だな、祐一」 こいつもまた唐突に出現すると、橘 真耶は軽く手をあげてそう挨拶をしてきた。 おれも同じようにしてそれに答える。 「えう〜、酷いです」 栞は大してこたえた様子も無く頬を膨らませて反論した。 真耶はそれには取り合わずについと視線をおれの背後に向けた。 「あっちも盛り上がってるな」 最初おれは迂闊にもその言葉が意味するところを理解できなかった。 「何がだ?」 真耶は無言でおれの背後を指差した。 「じ〜く、い・も・う・と!」 「はい〜る、あ・ね・ご!」 ……がってむ。 おれは姉さんを5分以上目の届かない所に放置した事を激しく後悔した。 それと同時にこのメンツと姉さんを逢わせてはいけないと本能が告げていた。 「祐く〜ん! お姉さんは頑張るからね〜!」 …………じーざす 「相沢君の知り合い?」 「赤の他人だ」 少なくとも今は。 「ベンチの上で演説かまして、あげくインモラル党結成とかやるような姉なんておれにはいないわ」 「そう、お姉さんなの」 いや、だから居ないって。 「どうでもいいが、止めるのが先決だろう?」 真耶の言うことも、もっともだった。 取りあえず姉弟の縁を切るにはどうすればいいだろう。 学校を辞めたければ教師を殴ればいいことだけど、姉を殴っても姉弟は辞められないしな。 心の中であっさり前言を翻し、音速拳の構えをとりながらおれはそんな事を考えていた。 To be continued |
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あとがき: いんもらる〜、いんもらる〜♪ <挨拶 黒サブレです。 突然ですが明日から旅行に行ってきます。 2泊3日なので13日までネットに繋げませんし、 メールや掲示板へのレスも以後になります。 でも感想はじゃんじゃん下さいぷりーず。 黒サブレは皆様からの感想、インモラル党への参加者を募集しています(爆) では。 |